語学と性格
4月。 新しい語学を始める人も多いだろう。
私が今まで関わってきた様々な経験から、「語学に向いている性格」を考えてみたい。
こどもに英語を、と思っている人にも大いに関係のあるテーマだ。
「語学」と一言で言っても、人によって目的が違う。
受験、仕事、翻訳、通訳、趣味、留学、…
目的により、必要な努力の程度や方法が違うが、そこはあまり深く考えないことにする。
①好奇心と関心
インドネシアに住んでいたとき、「日本語で用が足りれば最高」と考えている日本人が周りにはたくさんいた。せっかくの海外生活でも、日本人社会にどっぷりつかったまま帰国を待つことは可能だ。特に、家族として旦那さんの赴任についていった場合。
現地の食べ物は口に合わないといって手を出さない。こどもが口にするものはお手伝いさんに触らせない。習い事はやってみるけれど、日本人の奥さん友達とお喋りするのが楽しみ。
そこまで極端でなくても、「ことばは最低限の用が足りるようにマスターできればよい」 と、始めから考えている場合、ほとんど上達しない。しかし、本人は上達しないのはその意識が原因だとは露ほども思わず、「やっぱり私って語学が苦手なんだわ」と思い込んで満足する。
語学上達の必要条件は、そのことばを使って外国の人と話してみたい、その地域のことをもっと知りたい、と思う好奇心だ。
②つきつめない性格
私は、日本の企業で技術研修を受ける社会人に日本語を教えてきた。
彼らは、研修で必要な語学力を身につけることを要求される。
若い学生と違い、既に座学から離れている彼らが新しい言語である日本語を使えるようにするのは、並大抵な努力ではない。
研修生の中には、いわゆる理系の人と、文系の人がいる。
どちらが上達するか。
これは一概には言えない。
特に、文型を易しい順に積み上げていく初級レベルの場合、文法規則を機械のように性格に覚えて、理屈通りに組み合わせて使えれば、非常に短い期間で驚くほどいろいろなことが言えるようになる。こういうことは理系の人の方が得意だ。
ITで脚光を浴びるインド。インド系の人たちはとても理屈っぽい(笑)。実際、おそろしく数学的な「脳力」を持っている人が多いそうだ。そういうインド系の人たちは語学にも堪能だ。
日本語のクラスが多国籍の場合、インドの人が入っていると、群を抜いて上手い、ということが多い。(たまに、そうじゃないこともある…。)
しかし、一般的に、語学は文系科目であり、理系の人が「苦手」と言うことも多い。初級を過ぎると、法則通りに行かないことが増える。
「どうしてこうなるんですか?」 「どうしてって言われても…」
もちろん、教師の説明が下手で納得できないのは論外だが、そうではなく、アバウトなことが語学には多い。そういうときに、
「う~ん、なぜだろう…」
と考え込んで前に進めない人は語学では損をする。
「よくわからないけど、ま、いっか」
と、そのまま前進できる人は、得をする。もっと進んだ段階で、後から感覚的に納得できるようになることもたくさんあるからだ。