語学と性格2 | ~人とコトバ~

語学と性格2

語学と性格のところで、ふたつ挙げた。

 

①好奇心と関心

②つきつめない性格

 

続き…

 

③社交性・社会性

 

受験でとにかく点数を取りたいとか、語学を学問として研究したいという場合を除き、聴くこと・しゃべることで上達したいと思ったら、社交性は欠かせない。いろいろなタイプの人に日本語を教えてきて、つくづくそう感じる。人なつこく、話し好きで、人あたりのよい人は、習ったことばで話しかける相手がすぐ見つかる。当然話す機会に恵まれ、上達する。

 

それに対し、同じクラスで勉強していても、筆記で点数をとることに満足する人は運用力がつかない。こういうタイプの学習者は、隣の席の人と話す練習をする、という場面でも、必要最低限のことをしたら「終わりました」と言って、あとはだんまり。社交性のある人は違う。自然と話を膨らませて楽しみながら会話ができる。

 

これは、社会経験も物を言う。若い学生は、吸収力が高く、単語や文法をすぐ覚えるが、自分で話題を見つけ、または、自分が話せる話題の方へ相手を引き寄せて会話を続けるという能力に欠ける。反対に、30代以上の社会人は若い学生のようにどんどん新しいことを覚えることはできないが、その点を社会力でカバーできる気がする。だから、例えば、日本語を勉強し始めて3ヶ月の20歳前後の留学生と、30代以上の企業研修生を比べたら、若い留学生の方が圧倒的に日本語のレベルは上だが、研修生の日本語はたどたどしくてもすごく会話が楽しめる場合が多い。

 

こどもが母語を習得する場合は、耳から入った情報を材料にして無意識に文法規則を体系化し、いつの間にかしゃべれるようになってしまうが、およそ10歳を過ぎると、そうはいかない。大人の場合は、もちろん歳がいっているほど、難しい。

 

小学校にも、英語が入りつつある。早期教育も盛んだ。親が、自分が英語が苦手だったため、こどもには早くから習わせて、将来外国の人と自由に話せるようになったらいい、と夢描く場合も多い。では、どうすればいいか。カギはずばり「社交性」だと思う。広く言えば、新しい環境に飛び込んでいき、人間関係をうまく築くことができる能力。この能力は、大きくなってから慌ててつけようと思ってもできないのだ。

 

小学校低学年のうちに英検3級や2級をとることが「すごい」と思う人も多いようだが、どういう意味があるのだろう? 若ければ、吸収する。詰め込むのは簡単だ。でも、友達と遊んだり、他の交流活動に関わったりすることで社交性を育む貴重な時間を犠牲にしていることに気づかないのは恐ろしいことだ。得るものには目がいく。失うものには、すぐには気づかない。