ことばと音 | ~人とコトバ~

ことばと音

20年くらいまえだろうか。タモリがいろいろな外国語をそっくりに真似て喋っていた。本当は全然話せないのに。

すごいと思った。だれにでもできることじゃない.

 

ことばには二つある。

話しことばと書きことば。

話しことばには音がある。

音には表情がある。

だから知らない外国語を聞いたとき、受ける印象はいろいろだ。

 

明るい感じ、暗い感じ、おもしろい感じ、まじめな感じ、こわい感じ。

若い頃から、その違いに妙に惹かれ、語学がおもしろいと思った。やみくもに、「あなたの国のことばは暗い」などと言われたら、誰だってイヤだ。でも、受ける印象には音声学的な根拠がある。

 

簡単に言うと、例えば、I,E,A,O,U の母音には、それぞれ口の開き具合によって、明るいー暗い の違いが生まれる。

 

私はインドネシア語を使って生活していたが、ずっとあとになって、マレー語を聞いたとき、何だか締まりのないことばだなあ、と感じた。(あくまでも音を聞いたときの印象に過ぎないので、誤解なきよう。)

 

インドネシア語とマレー語はとても似ている。(この関係はいずれまた。)同じ単語が多いが、発音が違う。マレー語では、経済の法則に従い、語尾で口をはっきり開けない音が多い。

マナがマヌと、ルマがルムと聞こえる。「締まりがない」と感じたことには根拠があったのだ。

 

数年前にテレビで頻繁に流れた北朝鮮のテレビニュース。

アナウンサーの話し方は強烈な印象があり、近所のこどもたちがよく真似していた。

  

ハングル語には「有気音、無気音」の区別がある。

同じ「パ」の音でも、唇の前に当てた紙が揺れる「パ」と揺れない「パ」。この区別は日本語にはない。アナウンサーの話し方では、あの厳めしく強い調子に加え、日本人には、有気音がより強調されて聞こえる、というわけだ。