旅と乗り物6
乗り物にまつわる話を、もう少し。
車。 交通規則は、土地が変わっても基本的には似たようなものだ。
しかし、実際に慣れてみないとわからない、その土地の暗黙のルールのようなものがある。
交通教則を読んでもわからない、身体で感覚的に習得する部分。
例えば大阪。
初めて関西で知人の車に乗せてもらったとき、全ての車の運転がめちゃくちゃなことに仰天した。
こんなめちゃくちゃな運転マナーで、よく事故が起きないな、と不思議に思ったほどだ。
しかし、一見めちゃくちゃなのは関東人から見てめちゃくちゃなのであり、関西人にとってはそれがルールなのだろう。だから、事故だらけはならない。
世の中の広さを妙なところで感じた次第。
一例は、割り込み。
車線変更は事前にウィンカーを出して…。
関東では当たり前。 今は、入れてもらえたらハザードランプでお礼までする。
大阪の車はハラハラするほど車間を詰めており、車線変更でもウィンカーを出さなかった。
知人に聞けば、「ウィンカーなんか出したら、割り込めないように却って車間を詰められる。だから何も出さない」 と言うではないか!
昔の話なので、今は違うかもしれないし、そのときも極端な例だったのかもしれない。
しかし、東京では事故になりかねない運転も、回りが納得している大阪では問題にならないということ。
おもしろい。
大阪人は、横の車がウィンカーを出さずに車線変更してきても、「勘」でそれがわかるのだろう。
それに基づき、車が流れている。
きっと東京人はわからない。
ことばや習慣も同じ。
自分が常識だと思っていることが、土地を変えると常識ではなくなる。
それどころか、非常識に当たってしまうかもしれない。
旅でそんな事例に出くわすと、移動した距離以上に世界が広がる気がする。