学習
今、30歳の台湾の青年、Tさんに日本語を教えている。
Tさんは日本企業で研修を受けるために来日。
研修前に3ヶ月の日本語の特訓を受けている。
以前、アジアから日本に憧れて留学してくる学生の多くは、日本のテレビドラマやアニメ、ポップスに親しんできており、それが動機となっていることを話した。
Tさんの場合はまた新たなケースだと思うので、それを紹介したい。
来日当初、彼は全く日本語を「勉強」したことがなかった。
しかし、単語を数多く知っており、こちらの話すことも何となくわかるようだった。
自分で話す方はというと、単語を並べることはできても、文にはならない。
つまり、体系的な文法をまったく知らない。
すぐに、学習歴がまったくないということが、わかった。
それにしても、どうして単語だけを知っているのだろう?
普通、勉強したことがない人が何か少し単語を知っているとすれば、
「こんにちは」「お元気ですか」「ありがとう」「いくらですか」「どこですか」
など、よく旅行ガイドにも載っているような簡単な挨拶と数字。
または、自分で勉強したことがなくても、現場で日本人と接触があり、耳から覚えてしまっているケース。
しかし、Tさんの場合はそんな程度にとどまらない。
もちろん、中国語がわかるから漢字で意味がわかってしまうという類でもなく、ちゃんと日本語の単語を知っている。
聞いてみると、中高生のとき、TVゲームをやっていて、必要にせまられて辞書を引いていた、とのこと。
すべてが日本語のRPGゲームだ。
TVゲームにもいろいろあるけれど、特にRPGの場合は、出てくる文章の意味がわからないことには先に進めないはず。
ゲームを先に進めるために、必死で辞書をひいてことばの意味を調べている15年前のTさんの姿が目に浮かぶようだ。
勉強はやっぱり動機が大切。
何が何でもわかりたい。わからないと困る!
こういう状況に置かれる強さを改めて実感してしまった。
因みに、我が息子nakalは、漢字の勉強が大嫌いだが、変な漢字が意外とスラスラ読める。
「呪い」 「化身」 「洞窟」 …
ゲームからだ。
でもやっぱり、自然と覚えられるなら、こんなにいいことはない! と手放しでは喜べない。